2015年9月11日金曜日

Xを見つけること


わたしには子供を亡くした経験はないが。
友人知人の中には、そうした経験を持つひとが幾人かいる。

遠藤周作の『ひとりを愛し続ける本』にはこんな一節があった。

「わたくしの心のなかにはとても残酷なものがあります。三歳の子供をむかし交通事故で亡くしてから、 子宝に恵まれていません。だから道で、どこかの母親につれられた子供や、子供をつれた母親のしあわせな満足な姿を見ると、憎らしいんです。その子がわたしの子のように死ねばいいと、あの母親がおなじ苦しみを味わえばいいと願っている自分に気づき、ハッとするんです。そんな自分が鬼のように思えますが、その気持ちはどうにもなりません」 


このような激しい感情が湧き上がったことは、わたしにはない。
周囲の薦めのまま、20代後半から不妊治療をスタートし、
10年近く続けたものの、当時のマル高ラインだった35才で
リタイアする決断をしたわたしには無縁の感情だった。


このメッセージに対して、遠藤周作は・・・


「あなたのその気持は、世間的な道徳心などではとても処理できぬものだと私は考えます。世間の道徳などは人間にとって表面的なもので、時代や環境によって変るものなのですから(戦前と戦後を比べてください)そんな道徳よりももっと深い、もっと充実したXでなければ、あなたの子供を亡くした辛さや子供を持った他の母への嫉妬や憎しみを消滅できないでしょう。いや、ひょっとするとその感情はあなたの一生につきまとうかもしれません。しかし、Xはそれを認め、それを許してくれるでしょう。そのXを一生かかってお見つけください」


今の自分にそのXがあるかどうか・・・






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